チャンピオン

「アリス」がリリースしたボクシングをテーマにした一曲。実際のボクサーを題材にしたとも言われていますが、成功や勝利ではなくもはや老い衰えた王者のラストファイトを形にしたという斬新さがありましたが、今まで圧倒的な支持を受けてきました。

と、言いますのもある程度キャリアを積み重ねたボクサーのほとんどは手痛い負けを味わうことになりますし、チャンピオンにまでなった名選手のほとんどは、王座を陥落してリングを降りることになるからです。いくら勝っても終わりがなく、チャンピオンに挑む選手たちは常にベストコンディションで勢いがあります。どんなに優れた選手もやがて衰えが隠せなくなり、しかしリングから逃げることもできず、絶望的な戦いに向かっていく現実を、これ以上なく写実的に表現しているからこそ、他のボクシングをテーマにした歌とは違う存在感を示しているのです。

胸に響くような低音域のベースの音を背に綴られていく最後の一戦の一日。王者にすがりついたのは彼の妻か親友か、戦えない人の目から描写されるリングの光景はまったく具体的ではありません。しかしそれだけに、今までずっと応援してきた王者の姿と被るのです。甘い恋や遊びの入る余地がない完全な男の世界、歌っているだけでボクサーの気持ちに寄り添えているように思えてくるような曲であり、皆でカラオケで盛り上がるにもいいですし、一人で熱唱して、かつての名ボクサーの姿に思いを巡らせるのも良いでしょう。

筆者について

trecomuni

記事を表示 →